東京物語

小津安二郎オマージュじゃありません(期待した人はごめん)。

2018年に出会った「名文」ベスト10

「め、名文……」と呟くのが癖です。

 

本を読むのが好きなのですが、それ以上に「名文~~!!!」と呟きたくなる文章そのものに出会うことが好きなのだと最近気づきました。

 

というわけで年の瀬なので、2018年に出会った名文たちをご紹介。

せっかくなので、

①2018年内に発表されたもの 
②2018年に私が読んだもの 
③短い文章だけで作品として成り立っている(小説の中の1場面とかはなしで) 

という制約つきで選んでみました。なので小説や批評一冊まるまる感動したものは除外してます、それはまた別の記事で。

で、こんな制約をつけたらインターネットのものが多くなりました。

2018年のWEBもさいこ~だったってことですね! よかった! 今日もインターネットは最高! たぶん!!

 

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10.谷川俊太郎「生きていく」

www.tanikawashuntaro.com

のっけからWEB上の文章だけどWEB上の文章っぽくない。だって谷川俊太郎だもの。けれどブラウザに浮かんでいても谷川俊太郎の文章はすっと頭に入ってくるからすげーよな、と男子小学生のごとき素朴な気持ちで感動する。谷川俊太郎先生の公式サイトはわりに好きでちょくちょく覗いているのだけど、無料でさらりと新作が置いてあるからすごいと思う。今年発表された中では上にあげた「生きていく」がすごく好きだった。詩って基本的にはノンフィクションの体裁に見える(=「私の気持ち」を歌ったものとして普通は読む)わりに、実はものすごくフィクション的な要素の大きい媒体で、そのバランスがいいよなあといつも考える。

 

 

 

9.松浦理英子「江南亜美子さんによる松浦理英子講演会での発言ツイートレポ」

大好きな作家さんのイベント、ほんと行きたかったんだけど行けず、しかしこうしてツイッターにあげられていた言葉だけで泣けてきてしまう。まさか自分がツイッター見て泣く経験があるとは思っていなかったので、衝撃のランクイン。松浦理英子が追っかけてる問題はいつも、自分の中だけの【内なるマイナー性】なのだよな。ほんとこの人信頼できる……と感動した。ぐぐったらイベントレポのブログがあったので載せとく。↓

マイノリティであるということ――10/31 トークイベント(ゲスト:松浦理英子)「現代文学を語る、近畿大学で語る」 - 快適読書生活

 

 

 

8.ひるねのたぬき「愚かさについて」

chez-nous.typepad.jp

ひるねのたぬき、というのは京大文学部にいらした吉岡洋先生のツイッターアカウント名のことです。はい。しかしこのブログにはあまりにも名文が多く、なんでこんなものが無料で転がっているのか理解不能です。いやもうこの文章とか読んでくれよ、書くこととは原理的にひとつの愚かさを引き受けるという選択!!! はいリピートアフターミー!!! 墓に刻みたい。嘘だけど。たまに読み返すと元気になる。これの次に更新された「文化とはスノビズムである」もすっごーくいい文章で、実はどちらを選ぶか迷った。

 

 

 

  7.宮崎駿高畑勲さん「お別れ会」追悼文」

www.huffingtonpost.jp

私が言うまでもないけれど、名文でしたね………。日本中が泣いた。「あの雨上がりのバス停で」っていう締め方が、もはやジブリの映画の中にいるかのよーな。で、そんなラストもいいのだけど、一番心を打たれたのは「僕らは仕事に満足していなかった。もっと遠くへ、もっと深く、誇りを持てる仕事をしたかった。何を作ればいいのか。どうやって。」というところ。もっと遠くへ、もっと深く。その両方があったからこそこんなにもジブリは異常な作品を生み出せたのだ。満足なんかしてちゃだめだよなあ。

 

 

 

6.chiyok0「その不足はまだ見ぬ他者である」

http://chiyok0.tumblr.com/post/169785818067/その不足はまだ見ぬ他者である

chiyok0.tumblr.com

今年の1月に更新されたブログ記事なのだけど、今もなおたまに、ふとこの記事の中にある「それはかつての私ではなかったか」という言葉が頭の中で反復する。そういうものを私はいつか忘れる日がくるのか。分からない。忘れてしまうのがあまりにも簡単すぎて分からない。すぐ忘れちゃいそうだけど、忘れた自分になりたいのかどうかはちょっと、微妙だ。

 

 

 

5.上田啓太「かわいいは作れるけど作れない」

diary.uedakeita.net

自分の体験談からの一般論、からの突然のaiko。作者からすれば突然ではなかったのであろーが、読者から見れば突然以外のなにものでもない。しっかし文章のお手本のよーな名文記事である。この人の文章はほんとにマジはずれがなくてはたして一体どうやって書いてんだ? とシェイクスピア7人説を疑うがごとく色々探りたくなってしまう。しかも誰にでも面白さが通じるんですよ、すごい。来年も更新楽しみにしております。

 

 

4.木下千花「女こどもの闘争――蓮實重彦の映画批評における観客性について」

(『ユリイカ』2017年10月臨時増刊号「総特集蓮實重彦」号、青土社、2017年所収)

www.amazon.co.jp

突然のユリイカ。こんなランキングに登場させるのもおこがましすぎる名文なんですが。名文すぎて慄くという体験をしました。話の流れ、緩急のバランス、構成からもちろん議論の内容に至るまで完璧なんですが、最も美しいのが冒頭。ほんとに読んでください、泣きますから。もちろん私が師弟の関係に弱いからってのはあるんですが、いやしかしそれ以上に、ほんとうの文章で、泣いてしまう。

 

 

3.amyca「君が一番疲れた顔が見たい」

amyca.hatenablog.com

あ、あまりにも好き。好きすぎて今年インターネット文章の中で一番読み返した文章かも知れない……。「君が一番疲れた顔が見たい」、って恋愛のものすごい真理だ。きっと好きな人は疲れた顔なんて一番見せたくない相手なんだけど、同時に疲れた顔を一番見たい相手なんだよね。すごい……うつくしい……。私もこういう文章をブログで書きたいのだけど、なんかもう実名で親や先生まで読んでる疑惑が出ており、ちょっとさすがに恋バナを真剣に書くのは憚られてしまうチキン。それにしても本当にいい文章だよ。

 

 

 

2.岸政彦「権威主義・排外主義としての財政均衡主義」

(『新潮』2018年12月号、新潮社、2018年所収)

www.amazon.co.jp

話題になった『新潮45』問題についての、社会学者・岸政彦先生の論考。いやほんっとに私の頭にクリティカルヒットというか、「2018年の総括」としてもすごく適切な文章。私たちの社会は、なにがどうしてこんなに「お金がない」と叫ばれているのか? 自己責任っていうけどそれはどこから来ているのか? 来年もきっと考えなくてはならないテーマだろうけど、ちょっとずつ社会は変わっているんだと思う、よくもわるくも。変わらない社会なんて、ない。

 

 

 

1.渡辺あや「命と壁と場所」

(『シナリオ付写真集『ワンダーウォール』』誠光社所収)

seikosha.stores.jp

 いやはや、この寄稿エッセイのためだけに買いましたよこの本を、私は……ええ……。詳しくはブログにも書いた(下にリンク貼ってます)ので割愛。しかしこのエッセイに書かれてある葛藤って、実は2番に選んだ岸先生の話と同じテーマなんだよな。きっと今年の私のテーマでもあったんだろう。言ってしまえば、文化とお金。あるいは愛と余裕。って言ってしまえばふぬけたテーマに見えるんだけど、しかし市場に巻き込まれる文化、って割と大きな問題系だと思う。来年も考えていきたい。

 

 

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というわけで1、2のやつはnoteとブログにそれぞれ感想を書きました。

note.mu

m3myk.hatenablog.com

 

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さまざまな人が書いてくれた文章を読むたび、はたしてこの地球上はほんとうに同じ地球上なのだろうか、と思う。

人によって見ている世界はあまりにもちがい、その世界の差異っぷりに私は文章を読むたびくらくらする。時代とか国とかいろんなもので私たちは私たちのことをまとめたがるけれど、それにしたってみんなが見ている世界はあまりにもひとりひとり、ちがう。

こんなにノリもキャラもちがう我々が同じ世界線に住んでるなんて、ギャグかよ、とたまに思う。あだち充のキャラと機関車トーマスのキャラと小津安二郎のキャラが同居してるくらい作画崩壊が起こりそうだ。

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最近あだち充の『クロスゲーム』を読んだんですが、あまりの切なさとすばらしさに胸をうちぬかれてしまった。青葉可愛すぎる。

 

それでも、だれでも文章が書けるインターネットという海のことや、だれもが自分の見ている世界について綴ることのできる文章という媒体のことが、私はわりと好きなのだ。

 

来年もたくさんのよき文章に出会えますように! 今年もよき出会いをありがとうございました。