東京物語

三宅香帆のブログです。京都の大学生活から東京のOL生活に至りました。新刊『妄想とツッコミで読む万葉集』発売中です~

理想と現実のかさなった場所 『プリンセスメゾン』によせて/2020年の抱負

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(『プリンセスメゾン』3巻、池辺葵小学館

 

 

この世には、思っていたよりも楽しく、キラキラしたものがたくさんあるな、と思うようになった。

社会人になってお金を稼ぐようになった。自分のお金というものはすばらしく、今までなら「まあそこまで優先順位高くないからいいか」とあきらめていたものに、「買ってもいいかも」と、ふっと手を伸ばすことができるようになった。

アンティークのマグカップ。ふわりと軽くてあたたかいコート。自分の部屋をあたためてくれるデロンギ。友達へ会うためだけに買った当日券の新幹線。C席から見るオペラ。ずっとスマホで見ていたアイドルの卒業コンサート

本や映画といった、いわゆる「情報」にしか価値を見出さなかった昔の自分からすると、「体験」や「使い心地」や「生活を楽にする」といった価値観にお金をつかうのは、妙に贅沢な気がして、買うたび少し緊張した。

だけど緊張以上に、キラキラしたものは、素直に、自分に人生をいとおしむ理由をくれた。

その買い物は贅沢だという感触以上に、大げさに言ってしまえば今日も家へ帰りたいと思う理由になったり、明日も仕事を頑張ろうと思う理由になった。ちょっとだけ人生がやさしくなった瞬間だった。

大人になってよかった。自分で選べるものの範囲が増えた。

 

だけど私は真面目なので(自分で言うけど)、素敵なものに出会うたびに考える。

私はこのマグカップくらい、コートくらい、デロンギくらい、コンサートくらい、素敵な仕事を、世に送り出せているのだろうか?

 

 

そんなふうに消費に興味を持ち、自分の仕事を反省していた年末。『プリンセスメゾン』という漫画を読んだ。働き者の主人公・沼越幸(通称・沼ちゃん)が「マンションを買うこと」を目標に、不動産関係のスタッフとともにマンションを探す物語だ。

沼ちゃんは、マンションという一世一代の「買い物」をひたむきに目指している。彼女のお金を貯める姿もひたむきだが、「どのマンションを買うか」という点においても彼女はひたすらにひたむきなのである。

隅から隅までさまざまなマンションを見てまわる。どのような生活を自分が暮らしたいか、自分の理想とするものはいったいどれなのか。

何でもかんでも選べるわけではない。理想と現実の、限りなく近づいたその一点。そこに自分の探しているマンションがあるのだ。そう考える沼ちゃんは、ずうっと、マンションを探し、働き続ける。

私は沼ちゃんの、マンションを探すその姿勢が好きだった。

沼ちゃんにとっては、住まいが変わったからって、毎日の仕事が楽になるわけではない。突然幸福になるわけではないのだ。だけどそれでも、マンションの一角が、自分の理想が投影されたその場所が、キラキラ光って、自分が生きることを助けてくれるはずだ。そう決めた目標に対して、ひたむきに探し続ける姿そのものが、キラキラして、うつくしかった。

私も沼ちゃんのような選ぶ姿勢を持ちたいし、そして仕事だってこんなふうにやりたい、と思わずにはいられなかった。

そんな2019年の年末だった。

 

 

2020年がやってくる。私はもっともっと、キラキラしたものに出会いたいし、自分だってちゃんと、誰かにとってのキラキラしたものを生み出したい。買い物も仕事も、どちらも私の一部だ。

キラキラというと軽薄な言い方なんだけれど。でも、ちゃんと面白くて、読み終えたあとに「読めてよかった」と思えるような文章を生み出したいのだ。

書きたい文章を、書けるようになりたい。

 

理想と現実の、限りなく近づいたその一点。

妥協せずにそこを探すこと。それしかないのだ。と、『プリンセスメゾン』を読んでいると、思う。

 

 

さあ、今年の私は、いい生産者でいられるのだろうか。いい消費者でいられるのだろうか。

あけましておめでとうございます。あなたにとって素敵な年になりますように!

 

 

 

プリンセスメゾン(1) (ビッグコミックス)

プリンセスメゾン(1) (ビッグコミックス)

 

 

今週のお題「2020年の抱負」

三宅香帆の自己紹介、お仕事依頼について

はじめまして、あるいはこんにちは!

三宅香帆(みやけかほ)と申します。こちらは自己紹介ページです。

 

Profile 

文筆家、書評家。1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。博士後期課程中途退学。

大学院にて萬葉集を研究する一方、天狼院書店京都天狼院店長として勤務。2016年天狼院書店のウェブサイトに掲載した記事「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」が2016年年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位に。現在は会社員の傍ら、文筆家として活動中。

著書に、ジャンル問わず価値観を変える本50冊を選書した『人生を狂わす名著50』(ライツ社)、様々な作品から読みたくなる文章の理由を解説した『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)、人々の悩みに効く本を紹介した『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』(幻冬舎)、万葉集の知られざる面白い歌を解説した『妄想とツッコミで読む万葉集』(大和書房)がある。

Blog:https://m3myk.hatenablog.com/

Diary:https://note.mu/nyake

Twitter@m3_myk

 

著作

『人生を狂わす名著50』(ライツ社)

『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)

『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』(幻冬舎)

『妄想とツッコミで読む万葉集』(大和書房)

 

仕事内容

・著書執筆

・批評、書評執筆

・エッセイ、コラム執筆

・文学や読書にまつわる講演、講座

・ラジオ、テレビ出演

・これまでの仕事はブログカテゴリ「三宅香帆の仕事」からどうぞ。

m3myk.hatenablog.com

・お仕事のご相談は april.spring201709@gmail.com まで。お気軽にお問合せいただけましたら幸いです。

※執筆のお仕事をいただく場合、内容によりますが2000字/10000円〜からのご相談となります。何卒よろしくお願いいたします。

 

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上の写真は私の家のカピバラです。

 

2019年三宅香帆の仕事まとめ【下半期/7~12月】

2019年のお仕事まとめ続き、下半期です。

上半期お仕事まとめはこちら。

m3myk.hatenablog.com

 

下期は、アト6に出演したり、京大レクチャーズ(@丸の内)や九州大学(福岡大好きになりました)にお呼ばれしたり、処方本と万葉集本の二冊を出版できてうれしかったことが大きな思い出です。下期はなんだかイベント多かったなあ。人前で話すのが得意かもと思いました(自分で言う)。ご依頼ございましたらなにとぞ。

 

***

 

【著作】

・『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』(幻冬舎)

www.gentosha.co.jp

↑サムネイルにbrでてるよ幻冬舎さん! 『人生おたすけ処方本』は「さまざまな悩みに本を処方する」書評の本なんですが。テイストとしては書評というよりは、エッセイの本になったなぁ、と原稿書き終えて思いました。処方っ娘(と私は呼んでる)。

とある雑誌に取材された際、インタビュアーの方がこの本のことを「エッセイ」としてめちゃくちゃほめてくださっていた(もちろんそれが仕事なところ大いにあるだろうけれど)のが印象に残ってます。

まだまだ、誰かの悩みに届くといいな。みんな悩むよな。私も悩む。自分自身、将来や進路や引っ越しにあたふたしている時期に書いていたので、やたら悩むモード入ってて(執筆環境としては)よかったです。

 

・『妄想とツッコミで読む万葉集』(大和書房)

www.daiwashobo.co.jp

「令和」のおかげで出た、愛しの万葉集解説本です。この本もな~~~出せてよかった。売れてくれるとなおうれしい。がんばれ妄想ちゃん(と私は呼んでる)。

大学院のときに万葉集の研究をしていたのですが、まあぶっちゃけ万葉集にはもうかかわらないだろうと思って大学院を退院したわけですよ! しかし退院後の入社式(四月一日)、元号が発表されて万葉集関係の依頼が来るわ来るわ。著作の企画にまで至ったんですから、ええ、令和パワーのおかげです。

でも、万葉集のことを本にできて、ほんとうによかった。大好きなので、やっぱり。

研究室時代の担当教官からも連絡が来たり、人生初の文庫本(いつか出したかった)に届いたり、いろいろと感慨深い本です。2020年も売っていくぞ!!!! よろしく妄想ちゃん!!!

 

 

【WEB連載】

・cakes『文芸オタク女子の バズる文章教室』(週1更新)

cakes.mu

上期に出した本のcakes連載です。毎回編集者さんがつけてくださる、気合の入ったタイトルをご覧くださいませ。

 

・monokaki『新時代のヒロイン図鑑』(月1更新)

monokaki.everystar.jp

7月から12月にかけて、6か月間連載させていただきました! 古今東西のヒロイン像の「現在地」をお伝えする連載でした。周りの人からの評判がよかったなあ。私もとても好きな連載です。場を与えてくださったmonokakiさん、編集者の有田さん、すっごく素敵なイラストを描いてくださったゆあさん、本当にありがとうございます! 

 

・365 book days『三宅香帆の今月の一冊 the best book of this month』(月1更新)

www.365bookdays.jp

「本が好き!」さんからお引越しした書評連載。よしもとばななさんの「キッチン」評がこれまでで一番PV数が多かったらしく驚きました。

 

幻冬舎Plus『ラブコメ! 萬葉集』(月1更新)

www.gentosha.jp

上期に引き続き。「万葉集」でなく「萬葉集」の表記を採用してくれたあたりに幻冬舎さんのやさしさもとい良心が見えますね。感謝。

 

・文春オンライン不定期更新

bunshun.jp

上期に引き続き。「凪のお暇、セジウィックで読めんじゃん!」とか「いだてん、フェミニズム批評で回収できる!」とか思って書けてうれしかったです。編集者さんの懐の広さ~~。

 

 

 【単発寄稿・掲載・講演】

7月

・7/16TBSラジオ「アフター6ジャンクション」に出演

20:00~20:45「ビヨンド・ザ・カルチャー」:良い文章とは?特集 by三宅香帆

www.tbsradio.jp

・7/13文禄堂高円寺さんにて『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』トークイベント

peatix.com

・7/22に六本木文喫にて「人生を狂わす文章教室」トークイベント

peatix.com

ダ・ヴィンチニュースさんにて、ブラックニッカ ディープブレンド ナイトクルーズさんとの共同企画の「特集:ウイスキーを片手に読書という航海に出よう。」参加。

書評『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』( 江國香織)掲載

ddnavi.com

・monokaki連載開始

monokaki.everystar.jp

 

サンクチュアリ出版WEB MAGAZINEにて「ただのブログも、ある書き方を意識すれば「バズる文章」に変わる」を寄稿

sanctuarybooks.jp

 

8月

・「週刊朝日」2019/8/9号にて、『めぐりながれるものの人類学』(石井美保、青土社)書評掲載

・「THE21」2018/9号にて、『バズる文章教室』のインタビュー掲載

THE21 2018年 9 月号

THE21 2018年 9 月号

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2018/08/10
  • メディア: 雑誌
 

 ・8/17(土)高知TSUTAYA万々店さんにて『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』トークショー・サイン会

(2019/8/18「高知新聞」朝刊でイベントの記事が掲載されました)

 ・ダ・ヴィンチニュースにて『バズる文章教室』一部試し読み連載

ddnavi.com

・はたラボにてOL漫画について寄稿

www.pasonacareer.jp

 ・『バズる文章教室』について各メディアでご紹介いただきました

www.lifehacker.jp

blogos.com

style.nikkei.com

www.flierinc.com

・「アジアから見た万葉集 万葉集から見たアジア」というタイトルで、九州大学決断科学大学院プログラムの一環として講演会を開催していただきました。

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翌日8月26日読売新聞にもご掲載いただいていたようです。ありがとうございます。

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・文春オンライン記事寄稿

bunshun.jp

・「好書好日」インタビュー掲載

book.asahi.com

 

 

9月

USEN放送 A57chの「USEN MONTHLY SPECIAL」コーナーにて、9月の特集「超解説!万葉集!」の講師役

 ・『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』発売

副作用あります!? 人生おたすけ処方本

副作用あります!? 人生おたすけ処方本

 

 

・schoo生放送「「発信力」が上がる文章教室」講師役

schoo.jp

・文春オンライン記事寄稿

bunshun.jp

 

10月

・『文芸オタク女子の バズる文章教室』連載開始

cakes.mu

・10/31「140字で唸らせる「超文章塾」」@小学館カルチャーライブ、川崎昌平先生と対談イベント

sho-cul.com

note.com

文藝春秋社の月刊誌『オール讀物』2019年11月号にて、エッセイが掲載

「偏愛読書館」コーナーにて、松浦理英子さんの本の思い出について書きました。テーマは「私たちが可愛くいられる方法」について。

オール讀物2019年11月号

オール讀物2019年11月号

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/10/21
  • メディア: 雑誌
 

 

11月

・デビュー作『人生を狂わす名著50』重版四刷

wrl.co.jp

・11/2ワテラスブックフェスにて「バズる文章教室」トークイベント

jpicyouth.com

ダ・ヴィンチ・ニュース「親友と呼べるような本当の友達がいない、お悩みに効く本」コラム掲載

ddnavi.com

・『文藝春秋オピニオン 2020年の論点100』「大学受験に役立つ古典」10ページ寄稿

文藝春秋オピニオン 2020年の論点100 (文春e-book)

文藝春秋オピニオン 2020年の論点100 (文春e-book)

 

 ・11/20 B&Bにてチェコ好きさんと「三宅香帆×チェコ好き「私たちが抱える“問い”の答えは全部本にある」『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』(幻冬舎)刊行記念」トークイベント

bookandbeer.com

文学フリマ東京にて頒布される『前略』に寄稿「あるかわいいアイドルの卒業について」

 ・Fun Pay!さんにて「私が思う「ださい大人」にならないために、「10年後の自分に持っていてほしい本」を選んだ」記事寄稿

card-media.infoseek.co.jp

 

12月

・12/10「京大レクチャーズ~村上春樹を読み解く~」にて講演

www.kyodai-original.co.jp

・文春オンライン記事寄稿

bunshun.jp

・スナックサンクチュアリゲスト参加

www.sanctuarybooks.jp

・『妄想とツッコミで読む万葉集』発売

妄想とツッコミで読む万葉集 (だいわ文庫)

妄想とツッコミで読む万葉集 (だいわ文庫)

  • 作者:三宅香帆
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2019/12/12
  • メディア: 文庫
 

 ・AERA2019年12月23日発売号の特集「若者の間で短歌が静かにブーム」にて、書評家としてコメント寄せました

・リンネル2月号にて『人生おたすけ処方本』のインタビューしていただきました

 ・文春オンライン“2019年忘れられない「名言・迷言・珍言」”企画記事寄稿

「#ありがとう平成よろしく令和」に見る、日本人と元号の付き合い方

bunshun.jp

 

 

***

 

しいたけ.さんのブログで『バズる文章教室』を取り上げていただいたのもありがたかったです。いつも占い読んでいるのでなんだか不思議な感覚でした。

ameblo.jp

しいたけ.さんの文章についてのコラムは、実はcakes人気記事にもなりました! わーい。年間ランキング入り、はじめてした! ありがとうございました。

 

 

***

 

いやしかし、一年を振り返ってみると、夏と秋がとにかく忙しくて、今見てもよく息してたなと思います。就職したてなのに〆切が月に10個くらいあるのが普通になっていた。

昼間は会社員としてがっつり働いているのに、SNSで会社のことをつぶやいていないと、親(※私のTwitterを見てるんですよ、おそろしいことに)から「本当に会社で働いてるの? 大丈夫?」と心配される世の中です。ポイズン。ちゃんと会社では働いています。

 

忙しかった反面、なかなか告知しきれなかったとか、仕上げが雑になってしまったとか(あってはならないことなんですけれど)、2019年の仕事について自分では山盛り反省点があるので。

2020年は、忙しくなりすぎず、ひとつひとつの仕事に妥協しないで取り組めるように環境をつくってゆきたいな、と思っています。

やっと本格的にやりたかったことや夢見ていたことに取り組める時期なので。ここで妥協しないように。

自分の意見を伝えること、妥協しないこと、のふたつを大切にしたいです。びびらずさぼらないってことですね。

 

もっと、もっといい仕事をできるように精進します! 2020年もどうぞよろしくお願いいたします!

2019年三宅香帆の仕事まとめ【上半期/1~6月】

2019年もお世話になりました!

主にTwitterにて仕事の告知をしているのですが、日々「こんな記事がでましたよ~」「こんな本が出ますよ~」と垂れ流してるだけになりがちなので、一年概観できるようまとめました。2018年はこちら。

m3myk.hatenablog.com

 

まずは2019年上半期の仕事から。

主に『バズる文章教室』を6月に出したこと、大学や図書館で講義をできたことが大きかったです。2月の『ユリイカ』に文学批評を載せていただけたのも本当にうれしかったし、大切な仕事になったな。4月に「令和」が発表になって以来、万葉集関係のお仕事ができたのも驚いた!

 

出版社さん、WEB媒体社さん、本屋さん、取次さん、デザイナーさん、イラストレーターさん、出版やWEBメディアにかかわってくださっているすべての人々、なによりも読んでくださっている方、いつもほんとうにほんとうにありがとうございます!

 

【著作】

『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)
文芸オタクの私が教える バズる文章教室

文芸オタクの私が教える バズる文章教室

 

 今年は……この本を出せて本当によかったというかなんというか。この子が難産だったぶん(?)すくすくと成長して、今年大変よく仕事をしてくれました。ありがとうバズ子!(と心の中で呼んでる)。

バズ子は、私というよりも、サンクチュアリ出版さんの編集者さんや営業さんからかなり愛情(という名の労力。本当にありがとうございます)を受け、いろんなご縁をつないでくれました。ありがとうございます。この本のおかげで出会えた読者さんも多かった。

たくさんの本屋さんで見かけたし、平積みにされていたし。サンクチュアリ出版さんの力を見ました。すごすぎる。ありがとうございました。これからもバズ子がたくさんの方に愛されますよう。

 

 

【WEB連載】

cakes『三宅香帆の文学レポート』

cakes.mu

デビュー当時(2年前)から唯一ず~~っとお世話になっているcakesさん。今年は少しリニューアルして、「三宅香帆の文学レポート」というタイトルで「文学の流行を追いかける文学ナタリーっぽい連載」をいたしました。今はバズ子へcakes連載枠をお渡しているのですが、いつかまた書きたいです。文学ナタリーは必要だよ!

 

本が好き!「月間ブックレビュー 三宅香帆の今月の一冊」(毎月末更新)

info.honzuki.jp

これまたずっとお世話になっている、書評サイト「本が好き!」さんでの連載。前月の書評された本ランキングの中から、一冊選んで私が書評する、という形式。外国文学からエッセイまで、幅広いジャンルが入っているランキングなので、いろんな書評に挑戦できて楽しかった! 2019年下期からは連載サイトがお引越ししました~。

 

文春オンラインにて不定期更新

bunshun.jp

「令和」改元の際、一番最初に「万葉集と『令和』について何か書きませんか?」と原稿依頼をくださった文春オンラインさん。そこからほぼ毎月、ドラマや漫画や小説について、時流に合った切り口で書かせてもらってます。ありがたや。拝む。私はドラマ大好きなのですが、なかなかドラマ評を書くことがなかったので、文春さんで書かせてもらえてラッキーです。

 

幻冬舎Plus「ラブコメ万葉集

www.gentosha.jp

こちらも「令和」改元をきっかけに連載が始まったのでした。令和パワーのすごさよ。幻冬舎さんは2019年下期に本を出してくれたのですが、それとはまた別に万葉集連載をのせてくれる太っ腹出版社です。幻冬舎Plus、個人的に大好きな連載が載ってた媒体だから、これもお話いただいた時うれしかったな~!

 

 

 【寄稿・掲載・講演】

 2019年の執筆・講演・講座・掲載など。

1月

京都府立大学「書を読まんとや生まれけむ名著を味わう! 三宅香帆ワークショップ」(1月28日)講師

www.kpu.ac.jp

・『ユリイカ』2月号「特集 吉本ばなな」論考寄稿

「きっと、家族だからだよ」ーー吉本ばなな作品における食欲の源泉:noteエッセイ「どくだみちゃんとふしばな」シリーズを中心に

www.seidosha.co.jp

・cakes連載リニューアル「三宅香帆の文学レポート」開始

cakes.mu

 

2月

・『サイゾー』3月号「特集 美人じゃない”ブス作品”ブームとルッキズムの関係」にて書評・コメント掲載

・『週刊朝日』3月1日号書評寄稿

 

 

3月

いの町立図書館 開館20周年記念講演会「三宅流! 図書館で本とたのしく出会う方法」(3月10日)講演

 

4月

・文春オンラインにて「令和」について寄稿

bunshun.jp

幻冬舎Plus「ラブコメ万葉集」連載開始 

www.gentosha.jp

・Web春秋はるとあきにて「令和」について寄稿

haruaki.shunjusha.co.jp

・新潮社文芸誌「波」掲載「『万葉集』を読み、のこし続けてきた人たちがいたから―新元号「令和」と万葉集と漢文の素敵な関係―」

www.shincho-live.jp

この月5記事くらい「令和」について書いてた……。cakesにも書いてます。

・文春オンラインにて「平成の少女漫画」について寄稿

bunshun.jp

 

5月

・文春オンラインにて『きのう何食べた?』について寄稿

bunshun.jp

 

6月

万葉集について京都で講演

人社ユニット in GACCOH第2弾「やっぱり知りたい!萬葉集」(6/2@京都)

ukihss.cpier.kyoto-u.ac.jp

・『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)発売

www.sanctuarybooks.jp

・バズる文章教室発売記念「書き出しだけ大賞」審査員

www.sanctuarybooks.jp

週刊朝日『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』(千葉雅也/二村ヒトシ/柴田英里著)書評掲載

 ・文春オンラインにて田辺聖子追悼記事寄稿

bunshun.jp

 

***

 

寄稿じゃないのですが、デビュー作『人生を狂わす名著50』(ライツ社)を、「高校生へのおすすめ本2019」(山陽新聞)、「平成最後の気になる31冊」(徳島新聞)に選んでいただきました! 発売から1年半以上経ってるのにありがたいことです。

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岡山の図書館司書さんたちが投票で決める「高校生へのおすすめ本2019」に選んでいただきました!

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徳島大の先生や学生さんが選んだ「平成最後の気になる31冊」に選んでいただきました!

 

あとですね、あのですね、4月に最愛の松井玲奈ちゃん(昔からファンだった)の小説が出まして、cakes記事を書いたところ、ご本人から反応いただいたのも大変うれしかったです!!! 生きててよかった2019!!! 会社の昼休みにこれ見て叫びそうになった!!!

 

そんなわけで2019年上半期まとめでした。4月に新卒で会社へ入社したことを考えると、我ながらほんとよく働いたな……。

後半は次の記事にて!

m3myk.hatenablog.com

2018年三宅香帆の仕事まとめ

今更ですが、2018年の執筆(を中心とした)活動をまとめました。

書評を中心とした活動をおこなっています。

 

【WEB連載】

cakes『わたしの咀嚼した本、味見して。』(毎週木曜日10時に更新)

cakes.mu

本が好き!「月間ブックレビュー 三宅香帆の今月の一冊」(毎月末更新)

 

info.honzuki.jp

 

【寄稿】

・『小説現代』7月号「特集 青春小説」にて「青春小説ブックガイド」長文エッセイ、書評、おすすめ本寄稿

・『小説新潮』8月号「マイルーティーン」コラムにてエッセイ寄稿

・『週刊朝日』書評欄にて寄稿

 

【掲載、出演】

1月

インターネットラジオfmGIG<シャイニーズ>に、ライツ社の高野さんとともにゲスト出演

・京都天狼院一周年記念パーティー開催

 

3月

朝日新聞京都版3月2日インタビュー掲載

・『からだにいいこと』5月号インタビュー掲載

 

4月

・『週刊朝日』5/4-11合併号に書評寄稿

朝日新聞徳島版4月27日記事掲載

・徳島文学書道館にて講演「人生を狂わす本との出会い方」(4月28日)

 

5月

・『SPRiNG』7月号にて「梅雨に読みたい本」紹介

・cakes連載リニューアルスタート

 

6月

徳島新聞6月5日朝刊インタビュー掲載

・『週刊朝日』6月22日号書評寄稿

・京大生協発刊冊子『らいふすてーじ』6月号インタビュー掲載

・「私たちが昔話になる日を夢見て」(はらだ有彩さん著作『日本のヤバい女の子』出版記念イベント)登壇(6月23日、ロフトプラスワンエスト(大阪)にて)

・『小説現代』7月号「特集 青春小説」にて「青春小説ブックガイド」長文エッセイ、書評、おすすめ本寄稿

 

7月

・『週刊朝日』7月20日号書評寄稿

・『小説新潮』8月号「マイルーティーン」コラムにてエッセイ寄稿

・BOOK MARKET2018 ライツ社ブースにて参加

 

8月

・『週刊朝日』8月10日号書評寄稿

 

9月

・「うしろめたい読書日記」note有料読書日記を開始

高知新聞9月16日夕刊インタビュー掲載

・『週刊朝日』9月28日号書評寄稿

・WEBメディア「本が好き!」にて「月間ブックレビュー 三宅香帆の今月の一冊」が連載開始

 

10月

・『週刊朝日』11月2日号書評寄稿

 

11月

・京大吉田南総合図書館にて「拝啓、三宅香帆さま」読書トークイベント開催(11月7日)

・『週刊朝日』11月30日号書評寄稿

 

12月

・『SPRiNG』2月号「カルチャーアワード2018」小説部門選考委員として参加

2017年三宅香帆の仕事まとめ

2017年の活動まとめです。デビューの年です。『人生を狂わす名著50』関係の仕事ばかりです。裏では修論執筆してました。

 

1月 

2016年天狼院書店のウェブサイトに掲載した記事「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」が2016年年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位に。

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WEBメディア「cakes」にて連載開始。

9月

ブログをもとに全文書き下ろした『人生を狂わす名著50』(ライツ社)を刊行。

人生を狂わす名著50(ライツ社)

人生を狂わす名著50(ライツ社)

  • 作者:三宅香帆
  • 出版社/メーカー: ライツ社
  • 発売日: 2017/09/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

10月

「人生を狂わす「本」という存在について」
枚方 蔦屋書店さまのイベント「文学サロンVOL.9」にて、天狼院書店店主の三浦崇典さんのトークイベント登壇。

・『人生を狂わす名著50』重版決定

・SPRiNG12月号「NEW BOOKS」にて『人生を狂わす名著50』紹介

神戸新聞10月29日インタビュー掲載

RKCラジオ「きょうも元気にぱわらじっ!」10月30日出演

RKCテレビ「eye + スーパー」10月30日出演

 

11月

高知新聞11月13日夕刊インタビュー掲載

・『人生を狂わす名著50』e-hon NIPPONBEST~ニッ本ベスト~四国ランキング一位

・『人生を狂わす名著50』11月19日高知新聞掲載「金高堂書店調べ」週間ランキング一位

徳島新聞「各地の本」にて『人生を狂わす名著50』書評掲載

・『人生を狂わす名著50』重版三刷決定

12月

・KBSテレビ「おかやまっさん」12月4日出演

・読売新聞夕刊12月4日インタビュー掲載

・『SPRiNG』2月号「カルチャーアワード2017 小説部門」にて選考委員として参加

未熟さへの愛慕――『天気の子』による重力の反抗 (※ネタバレ超含みます)

 

 

「最後の『大丈夫だ』ってつぶやくシーンの背景は、雨であるべきだったと思う」

 

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「いやほんとそれ、あそこはせめて豪雨の中で『それでも僕たちは大丈夫だ』って言うべきだったよね」

「陽菜ちゃんの晴れへの祈りが通じた~的な意味かもしらんけど、社会を狂わしといてそれはないよね」

「でもあれが晴れってところが『天気の子』って作品の本質な気がする」

「わかる」*1

 

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天に向かって銃を撃つ。

すると弾は一瞬だけ重力に反抗する。一瞬、落ちずに、天にのぼる。

その重力に逆らおうとする瞬間を描いたのが『天気の子』という物語なのかもしれない。

 

 

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未熟さへの愛慕。それこそが『天気の子』という物語の特異さである。 

通常、未熟さは乗り越えなくてはならないものとして扱われる。いつまでも未熟であってはならない、成熟しなくてはならない。それはたとえば雨が天から地に落ちるものであるという重力が存在するのと同じように、子どもが大人に成長することは当然の方向性として扱われる。

そのような「重力」が存在しているからこそ、物語はビルドゥングス・ロマンを語り、人は誰かの成長に時に涙してきた。

たとえば、しばしば新海誠監督がその影響を語る村上春樹の代表作『ノルウェイの森』には、以下のような台詞が存在する。

そして俺は今よりもっと強くなる。そして成熟する。大人になるんだよ。そうしなくてはならないからだ。俺はこれまでできることなら十七や十八のままでいたいと思っていた。でも今はそうは思わない。俺はもう十代の少年じゃないんだよ。俺は責任というものを感じるんだ。なあキズキ、俺はもうお前と一緒にいた頃の俺じゃないんだよ。俺はもう二十歳になったんだよ。そして俺は生きつづけるための代償をきちっと払わなきゃならないんだよ。

(『ノルウェイの森講談社文庫、下p183、初出1987)

 私たちは、大人にならなければならない、という圧力あるいは重力の中で過ごしている。

 

本作でも、「早く大人になりたい」とつぶやくヒロイン陽菜の姿が描かれる。こんなふうに未熟な子どもだから自分は弟を守れないのだ、と嘆く陽菜を、主人公の帆高はサポートすることになる。

二人が「ビジネスパートナーになった」と述べる場面があるが、ビジネス――つまり自らの力を換金する作業によって、彼らは自分たちの未熟さを乗り越えようとする。陽菜はポテトチップスを使って料理を作り、帆高は自分たちが生きていくためのサービスのマネジメントに徹する。いかにも子どもが大人のパロディをしようとする場面が描かれる。

陽菜の弟である凪はもっとも分かりやすく、帆高に何度も「マセた小学生だ」と呼ばれる。それは彼ら子どもたちが大人になろうとする、未熟さから脱しようとする姿の象徴だろう。

 

しかしその一方で、相反する引力のように、彼らの周囲にいる「大人」たちは、大人であることを拒否しようとする。いや、大人であるにもかかわらず未熟な自分に戻りたがっている、というほうが正しいだろう。

夏美は、大人になる通過儀礼であるところの就職活動に飽き飽きした顔をする。須賀は娘を引き取ることができないが、妻の残したものを片付けられないままの事務所に住む。須賀が禁煙していたにもかかわらず、またもとへ戻るように喫煙する姿を描き、夏美に叱咤される場面は、大人たちが未熟な自分に戻ろうとする逡巡を描いたと解釈できる。喘息を持つ父として禁じていた煙草を、また吸ってしまうのだ。*2

 

この物語が未熟さを脱しようとする子どもたち――つまりは帆高・陽菜の話だけで終わっていたら通常通りのビルドゥングス・ロマンなのだが、新海監督はそうは描かない。

ある種の未熟さを起点とし、そこから脱しようとする子どもと、そこに帰ろうとする大人。その相反する方向性こそが『天気の子』の物語である。

たとえば重力に逆らって天へのぼる少年少女のように、通常であれば未熟から成熟へ動こうとする物語の重力に、新海監督は逆らう。帆高・陽菜のふたりの反対に、須賀・夏美を配置することによって、純粋なビルドゥングス・ロマンの重力に抗う。

 

しかし映画を見た人は、「いやでもこの話っていわゆる少年少女たちの成長物語、ビルドゥングス・ロマンなんじゃないの?」と言いたくなるかもしれない。帆高は、ビジネスパートナーとして陽菜の力を利用した自らを悔やみ、少女を人身御供にしようとした自分自身の無知を否定する。これは未熟さを断とうとする、いわゆる「大人になろうとする」試みではないのか、と。実際、『天気の子』を少年の成長物語として読むことは可能だろう。

が、それでは物語のラストシーンまで辿り着けない。

 

まず前述したように、陽菜は「大人になりたい」と願うヒロインであるが、大人になることを奪われたヒロインでもある。これ以上成熟すると、社会が狂ってしまう。だから大人になる前に消えなくてはならない。実際は年齢がもっと下だった、というエピソードからも分かるように、陽菜は未熟さを隠して生きるキャラクターとして描かれる。*3

そのような陽菜に対して、帆高は、「社会が狂ってもいいから、君のほうが大切だ、僕と君さえいればこの世界は大丈夫だ」と述べる。それは一見、恋愛物語としての帰結に読める。ある意味これまで「セカイ系」と呼ばれた物語の、ありふれた結末のようにも。

しかしこの後、新海監督は、大人――たとえば事務所を移った須賀、あるいは以前助けた老婦人――から「元々世界は狂っているのだから、きみの未熟さのせいではない」と述べさせる。これが『天気の子』が内包してきた、相反する重力――「大人になりたい」と「子どもにもどりたい」の引っ張り合いの帰着点なのである。

須賀は「自分の責任だなんて自惚れるなよ」と、老婦人は「もともと東京はこういう街だった」と帆高に伝える。そもそも世界は狂っている。君たちが未熟であったその代償として世界が狂ったわけではない。つまり、そもそも大人たちは未熟であり、その結果として社会は狂っているのだから、君たちのせいではない。

だからそもそも、大人になる=社会の一構成員であるために何かを失うくらいなら、大人にならなくてもいい。大人であるところのキャラクターに、そう言わせる。きみは陽菜を失わないままでいていいんだ、と。

 

物語中盤、須賀は帆高に陽菜を手放して島に帰ることを「大人になれよ、少年」と要請するが、結局その論理を通すと、少年・帆高は大人になっていないままである。妻を失った「大人」の須賀と対比して、帆高は陽菜を失うことを選択しない未熟さを抱えたまま「青年」になる。しかし『天気の子』という物語は、そのことを肯定する。未熟であるままの帆高こそを、この作品は肯定し、もっといえば愛しているのである。

 

まだ何も失っていない頃の、未熟だった自分を愛する感情。それは通常ノスタルジーと呼ばれる。大人になる、成熟するために何かを失う前の自分。まだイノセントだった自分への懐かしさ。しかしノスタルジーと呼ばれる感情は、本来ならば、現在の自分と断絶した過去を愛おしく思うものであるはずだ。

が、『天気の子』にとって未熟さは断絶しない。大人が子どもだったころの自分を突き放して懐かしく思うのではなく、本気で未熟さこそがこの世界をすくうのだ、と、肯定する。それはむしろ懐かしさではない、希望をそこへ見出す行為である。

 

だからラストシーンで帆高が陽菜と出会った時、社会=東京は土砂降りの雨であっても、その背景は晴れている。社会の天気を狂わせようとも、彼らは土砂降りの雨のなかで大丈夫とつぶやくことはない。なぜなら、「大人になれ」という重力に反する――天から雨を降らせる力に逆らうこと、つまりは未熟なままでいることこそを、帆高は選んだからだ。

帆高は、陽菜にこんな力を持たせた世界を憎む、とも言わない。ただ「大丈夫だ」と言う。 陽菜が世界を狂わせる力を持ったままだとしても、陽菜が力を持ったままでは大人になれないとしても、自分も同様に大人にならないままでいるから大丈夫だ、と。

『天気の子』という作品は、その未熟さこそを美しく描き、大人になろうとしないことの甘美な痛みを愛する。

 

未熟さは希望である。

雨であるはずの東京で、束の間晴れた美しい空を背景にしたラストシーンは、その宣言だったはずだ。

 

 

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個人的には未熟さを愛するなんて死んでもしたくないしまじファックと思うけれど、でも、『天気の子』という映画体験はその美しさを描いた作品だった。と私は解釈している。映画の中で歌う野田洋次郎が綴ったように、それは、「重力が眠りにつく」日の話なのだから。*4

 

『天気の子』の主人公・帆高は、銃を空に向けて撃つ。重力を振り切るように、弾を上にむかって撃つ。

それが「きもちわるい!」とヒロインに叩かれるほどに未熟な行為であることを、おそらく新海誠監督は誰よりも分かっているのだろう。

でも、その未熟さを本気で愛する(繰り返すが懐かしむのではない、たぶん新海監督は本気で未熟さこそを愛しているのである)、ちょっと狂気じみた感情を描く映画に癒されることもまた、映画というエンターテイメントの効用、なのかもしれない。

 

 

 

*1:と、いう会話をこないだ友人とした。Twitterで『天気の子』について書いたらその次の一週間会う人会う人みんな『天気の子』の話をしていた。すごい。まじですごい。

*2:インタビューで「須賀は帆高に“大人になれよ”とか言うくせに、自分は大人にちゃんとなれていないと思うんです。大学生の夏美は“大人になりたくない”と思っていて、モラトリアムの中にいることを自覚している。」と語る新海誠監督は意識的にこれらの大人と子供の対比を描いていると考えられる。参考URL:https://ddnavi.com/interview/554801/a/

*3:自らの処女性を売る現代のアイドル像を表象しているように考えられる、が、たぶんいろんな人が言ってるので省略~。

*4:『グランドエスケープ (Movie edit) feat.三浦透子』(作詞・作曲:野田洋次郎)歌詞URL:http://j-lyric.net/artist/a04ac97/l04ce5d.html