東京物語

三宅香帆のブログです。日々の感想やレビューなど。感想は基本的にネタバレ含むのでご注意を。

自分のエッセイ的な

2021年、宝塚沼にはまって驚いた6つのこと

2021年、仕事もいろいろあったのですが、それはそれとしてなにはともあれ、私にとっては宝塚にハマった年……というのが一大トピックでありました。 「現場のある趣味」というものがそんなになかったので(アイドルは好きだったけど基本的に在宅だった)、そも…

2010年代、ネオリベアイドルの誕生―AKB48・乃木坂・欅坂・日向坂はなぜ流行したか?

※こちらはいつかどっかで書きたかった、てかなんなら本で書きたかった新自由主義とアイドルと2010年代のコンテンツの話です。書く場を失ったうえに2021年になっていい機会なので放出してみます。笑 たのしんでいただけたら~。 はじめに――2010年代のアイドル…

今年もたくさん考えたい(あるいは面白い本に出会う方法)

たまに「どうやって読む本を選んでるんですか?」と聞かれることがある。 本を読むのが好きです、できるだけ面白い本を読みたいです……と私がいつも言ってるもんだから、じゃあてめえはどうやって面白い本に出会ってるんだよ、と思われるのかもしれない。もち…

柏木由紀さんのメイク動画のおかげで、健康になった2020年

2020年は、健康になった年だった。だれのおかげでもなく、ゆきりん――AKB48の柏木由紀さんのおかげである。 ゆきりんと健康。といっても、これは「推しのおかげで元気になりました!」みたいな話ではない。ちょっとまどろっこしいけれど、経緯を説明しよう。2…

『A子さんの恋人』とあなたの存在は軽いのか

「やはり 答えは君にしか出せないのだ」(『A子さんの恋人』7巻、近藤聡乃、KADOKAWA) のっけから本題から離れる話で恐縮なのだが、ミラン・クンデラの小説に、『存在の耐えられない軽さ』という作品がある。ひとりの男性に対してふたりのヒロインが登場す…

忘れることは… 歌集『ビギナーズラック』によせて

北白川を南から北へ、音楽を聴きながら琵琶湖疏水のそばを歩いていくと、ニ〇分もすれば北大路通へ出る。北大路通と東大路通の交差点にはミスタードーナツがあって、僕にはそこでカフェオレを飲みながら本を読む習慣があった。試験前の勉強もそこでする程度…

無料で読める、マイ・フェイバリット・インターネット記事を集めてみた

みなさま、家ですごしてますか! 家で無料でできる遊び。そう、インターネット。 インターネットといえばSNS、しかしSNSちょっと見ると疲れる……というときは、「なんともないブログや記事をたらたら読む」のを、私はおすすめしたいです。 そんなわけでという…

理想と現実のかさなった場所 『プリンセスメゾン』によせて/2020年の抱負

(『プリンセスメゾン』3巻、池辺葵、小学館) この世には、思っていたよりも楽しく、キラキラしたものがたくさんあるな、と思うようになった。 社会人になってお金を稼ぐようになった。自分のお金というものはすばらしく、今までなら「まあそこまで優先順位…

京大を退院します!

京都を離れて、東京にいくことになった。 ……これからブログタイトルどうしよう。っていうとなんか他人事みたいなんだけど。 現在わたくし京都大学の大学院に所属しているのですけれど、この春から、東京で一般企業に就職することになったのですよ。あっ書く…

2018年に出会った「名文」ベスト10

「め、名文……」と呟くのが癖です。 本を読むのが好きなのですが、それ以上に「名文~~!!!」と呟きたくなる文章そのものに出会うことが好きなのだと最近気づきました。 というわけで年の瀬なので、2018年に出会った名文たちをご紹介。 せっかくなので、 ①…

リアルタイムに書けない

恩田陸の『光の帝国』という連作短編小説集の中に、「大きな引き出し」という短編がある。 特殊な能力を持った一家の話で、すごく好きな短編なのだけど、その中に「しまう」という能力が出てくる。 彼らは、いろんな芸術や文化を自分の中に「しまう」ことが…

自分が大人になるだなんて知らなかった

萩尾望都の『10月の少女たち』という短編集が大好きである。 短編集といっても、小学館文庫が初期作品を集めて出したものだ。『精霊狩り』とか『みつくにの娘』といった「いかにも萩尾望都」なファンタジーやSFめいた傑作も収録されているのだけど、どちらか…

『ワンダーウォール』の渡辺あやさんのエッセイが素晴らしすぎて思いのたけを綴ったら長文になってしまった

ある日、三条で人と会った帰り道、丸善にお目当ての本を買いに寄ったら、まったくお目当てではなかったはずの『ワンダーウォール』のシナリオ写真集を買ってしまった。 seikosha.stores.jp とくに買う気はなかったのになぜ買ってしまったかって、私が崇める…

「人文学って何の役に立つの?」って聞かれた時の最適解 ――シェヘラザード・サバイバル・大作戦

今も昔も、私の「理想の女」はシェヘラザードだ。 話が面白いから殺せない女になりたいのである。 バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜 (ちくま文庫) 作者: 古沢岩美,大場正史 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2003/10/13 メディア: 文庫…

万能素敵サブウェイ先生(との思い出)

誰しも人生で一度は思ったことのある事実だと思うけれど、なぜいい感じに人が少なくてのんびり長居できてそんなに値段が高くない喫茶店というのはすぐになくなってしまうのだろう。 いやほんとに。何の話かって、百万遍に電源のあるカフェがほしいって話です…

キャラを分けたい2018

ああ、ペンネームがほしかった……。と、ぶっちゃけ5分に1回ほど思う。 いや、ちがうのだ。「三宅香帆」という名前に不満があるわけではない。というか三宅香帆という名前自体は私はわりと気に入っている。読み間違えられないし。ええんちゃうのという感じで…

京大の吉田寮をモデルにしたドラマ『ワンダーウォール』を見た(あるいは敵のいない物語の作り方)

この世にはどうしたって物語になる人とそうでない人がいて、もっというと、物語になる物語と物語にならない物語がある。 本当だ。 いや、この世はみんながそれぞれ主人公なんだよ、という言葉もある。その主張に異を唱えようとは思わない。実際みんなそれぞ…

実年齢24歳にもなるのに未だに自意識が13歳

人生、24年目である。 正直、分からない。ここ数年、自分の年齢に全然しっくりいってない。自分がもっと年取ってていい気がするし、逆に自分がもっと若くてもいいはずだという気もする(なんて図々しい発言なんだ)。23歳とか24歳ってみんなこんなふうに微妙…

「読むって、簡単なことじゃないんだよ」

物理の研究者は頑張ったらノーベル物理賞をとれるけれど、文学の研究者は頑張ってもノーベル文学賞をとることはできない。 と、いうのは笑えるんだか笑えないんだかよく分からないジョークである。まぁ、ジョークっつーか真実なのだけど。 大学院で文学研究…

場所の記憶はいつもなぜか重層的(あるいは女の子デートの思い出)

時間というものは線上に流れているものではなく、浮かんでいるものである。 と、最初に言っていたのは、だれだっただろう。 たしか恩田陸のエッセイか小説だったと思う。が、どこで読んだのか忘れてしまった。こないだ読んだ萩尾望都特集冊子に恩田陸が寄せ…

その本棚に潰されなくとも

昨日の朝、がたがたっ、と私の横が揺れた。 なんじゃらほいと思って顔をあげると、揺れていたのは私の頭の前にある大きな本棚だった。 そして本が二冊ほどジャンプするみたいに、飛び出していった。 ひゃーすごい、と思うも束の間、自分も揺れていることに気…

なぜ京大生は無駄話が得意なのか?

いつだったか、森見登美彦さん原作の映画『夜は短し歩けよ乙女』を見た感想として、「すべてが無駄で埋め尽くされており、こんなにも大学生活は無駄なものでいいのかと思った」というものを見かけた。 ちょっとどなたのTwitterだったのか失念してしまったの…

そろそろベスト・オブ・京都小説アンソロジーを誰かつくってくれ

このブログのコンセプトは「京都の学生生活おすそわけ♡」なはずなのだが、そろそろ本筋から外れすぎてあかんと思う今日この頃である。なんじゃ前回の文章のセブンルールて。自分でつっこむわ。いや書いてて楽しかったからいいんやけど。 しかし京大について…

大学院生がアイドルから学んだ「読んでて楽しい文章」を書くためのセブンルール

ネットで文章を書き始めて、はや数年が経とうとしている。 ありがたいことにたくさんシェアしてもらえた記事があったり、 tenro-in.com こちらの記事をもとに「本を書きませんか?」と出版社さんから言ってもらえたり、 人生を狂わす名著50 作者: 三宅香帆,…

立て看板のないきれいな大学になれてしまった

世間をお騒がせしながら(したのか?)大学から立て看板が撤去された。 www.asahi.com そして現在、ぶっちゃけ、大学の周りがきれいになった。*1 正直な話、私は立て看板を立てたことも撤去したこともなく、特別な思い入れがあるかないかと言われればまぁな…

夏の下鴨神社はとにかく最高、すきすきだいすきちょうあいしてる

……ってのは舞城王太郎先生リスペクトな題名をつけたかっただけなのですが。すみません。*1 しかしちょうあいしてるかどうかはともかく、京都の観光地のなかで一番思い出深い場所、と聞かれたらなんだかんだ「下鴨神社かな……」と答える気がする。ちなみに一番…

世の中には「インプット」型と「攻略」型がおりまして(という名の受験勉強攻略法)

友人が「今年も死んだ目をした新入生が入って来たよ~」とにこにこして言っていた。死んだ目をした新入生。「まぁ四月の最初だけは死んだ目してるよ」と友人は笑う。 そりゃそうだ。友人は某予備校で塾講師をしていて、浪人生を主に教えている。 もうそんな…

この春、文学部に入学したみなさん、おめでとう!

文学部に入学したみなさん、おめでとう! 就職がない*1だの社会不適合者が行くとこだのそこ出てなにすんのだの言われつつも文学部に入ってくれたあなたを、私は心から歓迎します! だって仲間が増えたんだもの! いい仲間かわるい仲間かは知らんけど! うれ…

鴨川を語る詩人になれなくて

桜の季節である。完全に今年は早かった。いつもなら入学式の段階で「わ~京都の桜きれい~♡満開だ~♡」なんて言う初々しい新入生に「ところでうちのサークルのお花見がこの週末にあるんだけど来ない?」と下手なナンパかよとつっこみたいサークルの新歓が行…

「どうして今までそれで生きてこれたのか」となんども思った京大での六年間について

六年前、いたいけな田舎娘(私)が京大に入って驚いたのは「どうして今までそれで生きてこれたんだ……」という人間の多さであった。 どうして今までそれで生きてこれたのか。 京大というのは日本で一番自信家の多い大学である(という話を昔書いたことがある…