東京物語

三宅香帆のブログです。日々の感想やレビューなど。感想は基本的にネタバレ含むのでご注意を。

今年もたくさん考えたい(あるいは面白い本に出会う方法)

たまに「どうやって読む本を選んでるんですか?」と聞かれることがある。

 

本を読むのが好きです、できるだけ面白い本を読みたいです……と私がいつも言ってるもんだから、じゃあてめえはどうやって面白い本に出会ってるんだよ、と思われるのかもしれない。もちろん本にもあたりとはずれがあり、最高だ面白すぎると思うものもあれば、ばかやろうなんも新しいもんないじゃねえかと投げ捨てたくなるような本もある。私はできるだけ、前者の本に出会いたい。

だけどできるだけ面白い本に出会いたいと思うとき、一方で必要なのは、それを面白いと感じられる自分の素地だったりする。つまりその本が描いているテーマに興味がなければ、どれだけ面白い筆致でものを書いていても、「ふーん」で終わってしまうことが多い。この世で泣ける恋愛小説が売れるのは、恋愛の切なさに興味を持つ人間が多いからである。

 

私には、考えたいテーマというものがいくつかある。そしてそれに沿って、読む本を選んでいる。

男と女の承認欲求や自意識のありかたって、どうして、どのように違うんだろ。どうすれば大学の学問は社会の役に立つって認めてもらえるのだろう。なぜ日本はまじめな人が多いわりに組織になるとぐだることが多いんだ。なんで私はアイドルがこんなに好きなんだろう。なんで父は息子に嫉妬しないのに母は娘に嫉妬するんだろう。日本の男性作家はどうしてこうも少女が好きなんだ。なんでみんな働いてるわりに愛や家族にくらべて労働は文学のテーマになりづらいんだ。どうして育児はみんな話題にするのに介護はこんなにも見過ごされているのか。結婚はどうしてこうもルッキズムと結びつきがちなのか、あるいは結びつかないことを主張されたがるのか。どうしたら、人は孤独じゃなくなるんだろう。

 

私は主張したいわけでも批判したいわけでもなく、ただ、納得したいのだ。ああそういう原理だったのか、なるほどね、と。分かりゃあいいのだ。だから考えたいのである。

 

人間について考えたいことはたくさんあるし、小説や漫画は物語というメタファーを使ってそのあたりを一番深掘ってくれる。だから信頼している。新書もエッセイも学術書も、考えたいテーマについて書いているなら、そしてちゃんと考えている人の文章なら、やっぱり面白い。

 

究極、会社に行くのも人と会うのも生きているのも、考えるためのデータがほしい、面白く本を読むための材料がほしいからだ。人生は長いので、考えたいテーマは多ければ多いほどいい。そうすれば続きを知りたくなるから。

 

今年もたくさん考えたい。なにかを読んで、書いて、たまに体験して。なるほどね! と納得できた時がいちばん生きてる実感がわく。

 

あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします、ね。