東京物語

三宅香帆のブログです。日々の感想やレビューなど。感想は基本的にネタバレ含むのでご注意を。

宙組と真風さんが好きなんですよ私はー『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』 『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』

あなたはときめきで死にそうになったことはありますか。私はあります。

激重書き出しから始まってしまったんですが、今年は自分の中で宝塚イヤーとなっており、観ては「これはどういうものなんだろう」と自分に問いかけ日記に書き、さらに観ては問いかけ日記に書き、たまに参考文献を見つけては読み、知り合いに先達がいれば教えを乞い、テンションの合うブログを見つけ、を繰り返している。キモい、我ながらキモい。でもアイドルにハマったときも同じことやってたし新選組や数々の好きな小説にハマったときも同じことやってたのでそういう性格なんだと思う。(どうでもいいけど近年の「オタク」の定義は「推し」がいることのように見えるのだけど、私はたぶん推しを推すというよりも情報を網羅したい調べたい知りたいスイッチが入るタイプのオタクなのです)。

「私と宝塚の出会い」から話すとものすごく長くなるのでアレなのだが、初めての観劇は去年で『はいからさんが通る』、原作漫画が好きなので観に行った。なるほど!! ってのが最初の感想だった。非日常で楽しくて美しくきらびやかで、これはハマる人がいるのもわかるわ、と納得した。そもそも少女漫画の実写化としてあまりに正しすぎる。少女漫画のヒーローというのは少女の夢なので、実在の男性じゃないんだよあれは、だから「美しい女性が男役を演じる」のが大正解なんだよ。柚香光さんはかっこよかったし華優希さんはかわいかったし、私の好きなキャラである環を演じていた音くり寿ちゃんもとても素敵だった。

いいな~宝塚、またみたいな~と思っていたのだが、いかんせん宝塚のチケット、会員になっていない一般の民がやすやすと取れない。また機会があったらみたいなあとぼんやり思っていたところに、やって来た、機会。忘れもしない『アナスタシア』。Twitterで仲良くしている桜花さん*1が激推ししていて気になって、ひょんなことからチケットを取る機会がやってきたので、あれよあれよという間に二度目の観劇となった。

『アナスタシア』の感想は今からでも書きたいくらい、もうDVDでも疲れた時に何度も観ている、大好きな作品。とにかくなにもかも好きだった。キャラも、俳優も、台詞も、曲も、衣装も、舞台も(あとから気づいたのだが私はロシアものが好きっぽい)ぜんぶ好きだ。ディミトリとアーニャとヴラドに関してはもう観ている間中「い、一生、三人で仲良くしててくれ~~!」と心の中で叫んでいた。

なにより、ディミトリを演じる真風涼帆さんのかっこよさがちょっと異常だった。

私はもともと女子アイドルや少女漫画が好きな人間なので、ときめく=かわいい、だと思っていた。かわいいこそ正義、うつくしいものかわいいものを愛でていたい。しかし真風さんはそんな私の好みをやすやすと飛び越え、ちょっとびっくりするくらいかっこよかったのであった。いやほんとかっこいいんですよ。意味がわからない。こんなに「かっこいい」メーターが振り切れたことがあっただろうか。いやない。かっこいいで自分の感情が埋め尽くされるという初体験。自分の人生で生身の人間に対してこんなに「かっこいい」と思ったことは後にも先にも、ない。

かくして『アナスタシア』にはまり、気づいたら真風さん率いる宙組の過去作品(『天は赤い河のほとり』や『オーシャンズ11』のような自分の好きな作品を演じていたのも大きい)を楽天TVで観て、真風さんの二番手時代や昔いた星組の作品も観たくなり、気づいたらスカステに入り、気になる作品を録画する生活が始まったのだった……。(このあたり、自分のなかで衝撃が大きすぎてSNSでもあんまり言えなかった。言葉にならなかったんである)。

 

で。ホームズですよホームズ。すっかり宙組ファンというか真風さんファンになってしまった状態で観た演目、『シャーロックホームズ/デリシュー』。

私は真風さんが好きなのもそれはそうなんですが、宙組のまかキキずんそらの並びが……好きなんですよ……。なんかとっても好き。なのでこの並びも最後なのかと思うと、うっ、観れてよかったけど切ない。

 

『ホームズ』は、原作のホームズVSモリアーティエピソードを中心に、アイリーンの存在感を強くした話。もともと原作を読んでいたのとドラマの『SHERLOCK』シリーズが好きだったので、登場するホームズ小ネタ集が分かって面白かった。あらすじは基本原作準拠。

なによりホームズ真風さんがかっこよすぎて、ちょっとそれだけでお腹がいっぱいだった。ビジュアルも話し方も大天才です。女性嫌いで早口で人の言うことを聞かなくて理系に精通しているホームズ。といいつつちゃんとアイリーンとは恋仲になる。個人的に思ったのが、これならもういっそ「女性嫌いだけど顔がいいからモテるホームズ」みたいなキャラにしてくれたら、がっつり宝塚版って感じになって面白いのになーということだった。(ワトソンが「過去に解決した事件」を歌うシーンで女性たちがホームズを囲む場面、ちょっとモテてるっぽかったし)。

ワトソンは原作より可愛くて人間味があって素敵な青年だった。今回原作と一番違うところが「ホームズ・ワトソン」の関係よりも「ホームズ・モリアーティ」の関係が重視して描かれているところだったので、ワトソンは割と蚊帳の外なところがやや残念。もっとホームズがワトソンと探偵っぽくしているところ見たかったよ~! あと天彩峰里ちゃん演じるワトソン妻が可愛すぎてきゅんとしてしまった。

反対に、モリアーティは一番宝塚版っぽかった。美しくてサイコパスな数学者。キキちゃんの今回の髪色好き。しかし一幕でまさか最後ライヘンバッハの滝まで行くとは。

全体的に「謎解き」よりも「ホームズVSモリアーティの対決と、ホームズとアイリーンの関係性」に重きが置かれた翻案だった。これは最近思っていることなのだけど、舞台って、小説よりもプロットはシンプルなほうが映えるし、それよりも登場人物たちの関係性の変化を中心に描く媒体なのかもしれない。小説はどちらかというとプロットの面白さだけで最後まで読ませてしまう媒体だから、それこそミステリのようなジャンルが生まれたわけで。でも舞台はプロットより人間同士の関係性で面白がらせるほうが得意な気がする。

舞台ならではのよさといえば、セットと衣装が、好き~~~!! 221Bのセット大好き、住みたい。あそこを私の仕事部屋にさせてくれ。228Bで踊るシーンもいい。ロンドンの街のすすけた感じを表現するセットも好きだったなー。アイリーンの衣装も素敵だった。あ、「The Game Is Afoot!」の曲もやたら好きだわ。指びしってするやつ。

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この部屋はどこで売っているのか……。



ショーの『デリシュー』のほうは、もう、きらびやかでときめきをくれて妖しくてコケティッシュでかっこよくてかわいくて、最高! 宝塚を観に来た感満載。私はレビューを生で観たのが初めてで、オケも初めてだったのだけど、めちゃくちゃテンション上がるなあと感動した。まず「パリでパティシエとして働く真風さん」設定の時点で、ありがとう……と神に感謝した。ご時世と重なる歌詞もあり、しかし全体的にコメディちっくで可愛い演出が多くて素敵だった。

宝塚の過去作品を観始めたときは、お芝居のほうが観てて楽しいなあと思っていたのだけど(もともと物語が好きなので台詞があってくれたほうが嬉しかった)。なんとなく最近はレビュー好きだなあモードに入っている。ちなみにレビューで好きな作品は『HOT EYES!!』『アクアヴィーテ!!』『NICE GUY』『BADDY』『カルーセル輪舞曲』。というかどれもまず曲が好きなのかな。

私は宝塚の舞台の、生きること歌うこと踊ることが祝福されていると感じるところ、それこそ「不要不急」に見える「ときめき」というものを作り出すことを全肯定しているところが好きなのだけど。『デリシュー』はそれをまさに体現してくれていて、生で観られてよかったなあと心から思った。

 

余談だけどたまに、恋愛の話で「本当に好きな人って、好きになった理由を言葉にできない」って言うじゃないですか。

私、あれ嘘だと思っていて。いや自分が目の前で起きていること感じていること全部言葉にしたいと願って生きているタイプなので、好きになったらむしろ言葉にしたくなるやろ、好きな理由挙げたいやろ、と反論したいのだけど。

しかし真風さんをみていると、あの言説に全力で納得してしまうのだった。「いや、好きになった人って、好きになった理由、言葉にできませんわ………」と。一瞬で掌を返す自分。

私が最初に好きになったアイドル、SKEにいたときの松井玲奈ちゃんの踊る映像をみたりしても同じこと思うんだけど。好きな理由があんまり言葉にできない。真風さんの映像をみても、いつみても新鮮にかっこいいし、その要素を分解しようとしてもできない。容姿とか声とか役とか雰囲気とかいろいろ言えるは言えるけれど、「いやもう存在が好きです」みたいな結論に落ち着いてしまう。うっ、我ながらキモいっ。なぜこんなことに。

「も、もっとはやくハマっておけば」と思うことはあるのだけど、でも最初が『アナスタシア』だったからこそハマった気もするし、コロナで在宅勤務になった今だからこそこんなに宝塚の映像をがーっと観れた気もするし、もっといえば社会人になって舞台を観るお金ができたからこそ舞台という媒体に興味を持った気もするし。まあ、なにかやだれかを好きになるのに、タイミングって重要ですよね。真風さんがこの時代にいてくれて、そして宝塚にハマらせてくれたことに心から感謝……。

この世界のときめきはここに。

 

 

 

 

*1:ちなみに桜花さんが書いたアナスタシアの感想ブログはこちら。

www.oukakreuz.com