新しい手触りの思春期小説ー『ブラザーズ・ブラジャー』(佐原ひかり)
素敵な小説だったー。
氷室冴子文学賞受賞作ということで気になって読んだのだけど。書きぶりがとても今っぽくて、なんかこう、みずみずしかった。ほんと、果実的な。果実小説。(?)
高校生のちぐさは、親の再婚によって家族になった弟がブラジャーをつけた姿を発見する。
タイトル見てLGBTQの物語なのかな? と想像した読者を跳ねのけるような笑、新しい感覚を描く思春期の物語。シチュエーションやテーマはいままでも描かれてきたような話なんだけど、だからこそ、丁寧に描かれる主人公の二人の葛藤が新しく今っぽく思えて、心地いい。
本当に10代の頃って、自分がしっくりくる自分になかなか出会えなくて、周りにもわかってもらえなくて、しんどいよねえ……と思いつつ読んだ。模索して自分に合うものを自分で身につける(服とかだけじゃなくて、肩書きとか立場とかも含めて)ことができると、すごい楽になるんだけどね! そこに至るまでが苦しいよねーーがんばれーーと応援しながら読んでしまった。
自分語りすると私もいまは書評家とか会社員とかいろんな肩書きを得て、こんなに肩書きがあるって楽なんだなと感じることが多い。肩書きがみんな一律「学生」なのって、結局、自分を表すラベルがわかりやすいキャラとか容姿とか部活とかしかなくて、ほんと、カテゴライズがなんて雑だったんだろうと思う。学生時代より全然今の方が生きやすい。それは自分は本が好きな人です、とか、仕事が結構好きな人です、とか、自分のことを相手に伝える手段がラベルとしてあるからなんだよね。私の場合は。
カテゴライズそのものがNGなんじゃなくて、そのカテゴライズが自分でしっくり来てないのに選ばなきゃいけない、その窮屈さがつらいんだと思う。学生時代って大変だ。もうやりたくない。苦笑。
そんな雑なカテゴライズを跳ね除けるような、それでいて葛藤も決断も丁寧に描かれてる小説。
今思春期の子にも届いてほしいなー。久しぶりにいい思春期小説が読んだ。