東京物語

三宅香帆のブログです。日々の感想やレビューなど。感想は基本的にネタバレ含むのでご注意を。

文体がいいー『パリの砂漠、東京の蜃気楼』(金原ひとみ)

マイブーム金原ひとみその2。筆者のパリと東京の生活をそれぞれ綴ったエッセイ。金原ひとみは文体が好きなので何を読んでも面白いです。お得。

一番胸がギュッとするのが、日本の女性蔑視に関する発言。こんなこというと嫌な気持ちになる人がいるかもしれないが、金原ひとみのような、ネットもそんなに精通してなくて(Twitterがんがんやってるタイプでもなく)、そんなにフェミニズムのイメージもなく、というかどちらかというと男性と恋愛することに全てを注いできたような女性が、「日本の男性はどうしてこんなに女性を見下しているのだろう」と書いている場合が一番切なくなる。なんというか、自分の信じるイデオロギーの話ではなく、ほんとうに実感としてそう思うんだな……と感じるからだろうか。読者として。

しかしブレイディみかこさんといい、居酒屋で絡んでくるおじさんはどうしてこうもたくさん存在するのだろう。日本の女性エッセイストはみんな絡まれているのではないだろうかという気にすらなっている。本当になんで?

 

あと「恋愛なしの人生が信じられない」という筆者の発言を読んで、これも世代の話があるのかなあと感じてしまった。なんとなくだけど。最近の小説や漫画に通底する他者不在問題(と私は呼んでいる)、恋愛なしの小説の割合とか統計とったら面白そう。誰かやってけろ。